身体的虐待シリーズ:センチネル・インジュリー(警告損傷)
日本語版
このeラーニングモジュールは、伝い歩きする前の乳児の医学的には軽度の予期せぬ損傷に対する認識を高め、対応力を向上することを目標としています。このような損傷は、養育者にも容易に視認しうるものですが、通常は何の医学的処置を行う必要性もなくすぐに治癒してしまうため、「特に問題のない怪我」とみなされてしまうことがしばしばあります。しかしこのような損傷は、虐待によって重度の損傷を負う以前に先行して確認されることが多いため、緊急かつ繊細な評価を行わなければならないものなのです。
本シリーズは、症例を中心とした学習モジュールであり、センチネル・インジュリー(警告損傷)の定義を明確にし、学習者が誤った一般的な通説を払拭することが出来るように努めています。具体的には、スクリーニング方法・病歴聴取法・検査に関する各種ガイダンスを提示し、さらには養育者や児童相談所と対話を深めていくための助言も提示しています。このモジュールを学習することで、最も対応が困難なケースであっても、その知識を臨床に応用することができるようになるでしょう。最後に、センチネル・インジュリー(警告損傷)の提唱者であるリン・シーツ医師自ら、ビデオ・メッセージという形で「よくある質問」への回答を行っています。
この「センチネル・インジュリー(警告損傷)」の学習モジュールは、「いつ虐待を疑うのか」について概説を行った「子どもの身体的虐待の医学的評価」モジュールの発展版というべきものであり、鑑別疾患を慎重に検討する際に必須である、「まず頻度の高い病態を考えつつ、稀な病態を意識に置いておく」という在り様を、学習者が認識できるようになることを目指しています。身体的虐待シリーズの他のモジュールと共に学習することで、臨床の最前線に立つプライマリーケア医療者にとっても、虐待専門医にとっても、貴重な学びが得られるでしょう。
このモジュールは、臨床の現場でのクリティカル・シンキング(批判的思考法)を促進するため、ナラティブな概論とケーススタディを組み合わせて構成されています。症例ベースで行った学習というのは、臨床現場での知識と実践を統合するうえで有用となり、また実際の臨床現場でケースに対応するうえで、再び本モジュールに立ち戻り参照するという形で活用することも出来るでしょう。
学習目標
セクション1:センチネル・インジュリー(警告損傷)とは何かを明確にする
- センチネル・インジュリー(警告損傷)の定義やその言葉の由来について説明することができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)という言葉を活用する意義につき説明することができる
- 潜在性損傷とセンチネル・インジュリー(警告損傷)の違いにつき説明することができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)をスクリーニングする方法について、列挙することができる
セクション2:センチネル・インジュリー(警告損傷)の評価法を学ぶ
- 確認された所見が外力による損傷(外傷)であることを確定するための戦略を立てることができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)と誤認しうる病態を特定することができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)を認識した際に、適切な潜在損傷スクリーニングを行うことができる
セクション3:センチネル・インジュリー(警告損傷)につき、養育者や児童相談所と対話を行うことができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)を確認した際に、親などの養育者からどのような姿勢で聞き取りを行うべきであるのかを説明することができる
- 追加で検査を行う必要性、ならびにそれらの検査にすべて問題が認められなかった際には、それが意味するところについて、養育者に説明を行うことができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)がなぜ早急な対応を必要とするかについて、児童相談所などの関係職種に啓発的な教育を行うことができる
セクション4:判断や対応に困難を伴う症例に対処できるようになる
- 養育者の行う「妥当性のある説明」や「荒唐無稽な説明」を列挙することができる
- センチネル・インジュリー(警告損傷)の存在から、医療者が養育不全の可能性を考慮して対応することに、養育者や行政職員・捜査員が抵抗を示した場合の対応戦略につき、説明を行うことができる
- 確定的な判断を下すことが困難なケースにおいて、子どもの安全性を高めるための計画を立案することができる
セクション5:シーツ医師(センチネル・インジュリー(警告損傷)という用語の提唱者)へのインタビュー
- センチネル・インジュリー(警告損傷)の種類について、列挙することができる
- どのような状況の場合に、センチネル・インジュリー(警告損傷)を虐待の合理的な疑いの根拠ととらえて対応する必要があるのか、説明することができる
- 関係機関が緊急に対応することや、精査対象とすることに否定的な見解を示した際に、どのように対応すべきか説明することができる
制作チーム
- ヒラリー・W・ペツカ医師
- リン・シーツ医師
- 医療責任編集者 ナンシー・ケロッグ医師
- 日本語翻訳監修 溝口史剛医師
