本文は以下のGitHubの議論についてのサマリーを提示したものです。
https://github.com/ror-community/ror-roadmap/issues/376
概要:
[EPIC] Address funder type
このIssueは、RORにおける funder(資金提供者)タイプの扱いをどう設計すべきかを整理するためのエピックです。
現在RORでは、Funder IDとのマッピングがある組織や、キュレーション経由で新規登録された資金提供者に funder タイプを付与していますが、その結果として大学・大学病院・政府機関など、本来的には別の主要属性を持つ組織にも funder が付くことがあり、利用者側で解釈のズレが生じています。
背景:
RORはこれまで、組織のスコープや分類において“meaning in use”(実際の利用文脈に基づく意味づけ)という考え方を採ってきました。
- 研究成果に所属先として使われる組織は研究組織と見なす
- 同様に、研究成果に資金提供者として記載される組織も funder と見なせるのではないか
しかし、ここには次のような問題があります。
1. funder をタイプとして付けることの違和感
- 大学
- 大学医療センター
- 政府機関
- 行政機関
こうした組織が研究資金を提供することはあるものの、一般的な認識では主たる組織種別が funder ではない場合があります。
2. 実際の大規模資金提供者は「専業ファンダー」とは限らない
Issueでは、たとえば以下のような組織が挙げられています。
- 米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)
このような組織は大規模に研究資金を出していても、本質的には
- 政府部門
- 行政機関
- 政策実施主体
であり、純粋な助成機関ではありません。
また、従来の Funder Registry では、こうした厳密なタイプ制約はなく、単に「研究資金を提供する組織」が収録されていました。
この問題の目的
RORが funder をどのようにモデル化するかを決めることが目的です。
特に、以下の4点を両立させる必要があります。
-
RORの “meaning in use” 原則との整合性を保つ
- あるいは、funderについてのみ例外的に別ルールを採るなら、その理由を明確にする
-
大学や政府機関などの主要タイプを保持する
funderが主要な組織種別を覆い隠さないようにする
-
出版社・サービス向けに「資金提供者ビュー」を提供し続ける
- しかも、今後Funder IDマッピングに依存しない形で実現する
-
二重の役割を持つ組織を適切に扱う
- 研究機関でもあり資金提供者でもある組織を、どちらか一方に単純化しない
主要な論点
1. funder は組織タイプか、それとも別の役割属性か
Issueの中心的な問いは次の通りです。
funderを organizational type(組織タイプ) として扱うべきか- それとも distinct role/attribute(独立した役割・属性) として表現すべきか
この判断は、RORのデータモデルや下流利用者の実装に大きな影響を与えます。
2. 組織を funder と見なす基準は何か
Issueでは、funding organization としての認定基準が未整理であることが問題視されています。
検討すべきポイント:
- 学術記録上で1回でも資金提供者として記載されたら funder とするのか
- ある程度の件数閾値を設けるのか
- そもそも、記載実績だけでは不十分なのか
- もし不十分なら、研究組織のスコープ判断との整合性をどう説明するのか
3. Funder Registry 廃止後の「funder一覧」をどう提供するか
出版社やサービス提供者は、従来から
「研究資金を提供する組織だけを絞り込んだビュー」
を必要としてきました。
しかし今後、Funder ID mappings に長期的に依存できないため、別の仕組みが必要です。
必要とされているのは:
- Funder Registry廃止後も使える
- 安定した
- 下流システムでフィルタ可能な
funders scoped view の提供です。
4. 二重役割組織をどう扱うか
大学や政府省庁のように、
- 主たる種別は大学・政府機関
- しかし研究資金も提供している
というdual-role organizations(二重役割組織)があります。
課題は次の通りです。
funderを残したい- ただし主要な組織タイプを埋もれさせたくない
- funderとしての役割も検索・発見可能であるべき
5. 移行と周知の影響
もし多くのレコードから types 内の funder を外すような変更を行うと、
- ある利用者にとっては修正
- 別の利用者にとっては破壊的変更
になります。
そのため、以下が必要です。
- 移行手順
- 影響範囲の整理
- 下流利用者へのコミュニケーション計画
Goal(目標)の要約
Issue本文の目標を整理すると、RORは次を実現したいとしています。
目標 内容
一貫性 “meaning in use” 原則との整合、または例外の明文化
可読性 大学・政府機関などの主要タイプを funder が覆い隠さない
継続性 Funder IDに依存しない funder ビューを提供する
表現力 二重役割組織の funder 性を失わず表現する
Questions and Decisions(検討事項)
この問題の内で明示されている主要検討項目:
-
funder関係を組織タイプとしてモデル化すべきか
- その場合、どのような制約を付けるか
-
funder認定の条件は何か
- 学術記録上の記載だけで十分か
- 件数閾値を設けるか
- 別の基準が必要か
-
Funder Registry後のスコープ定義をどうするか
- 出版社・サービス向けに「研究資金提供組織のみ」をどう抽出可能にするか
-
二重役割組織をどう保持するか
- 主タイプを維持しつつ、funder役割をどう可視化するか
-
変更の移行影響をどう扱うか
- 破壊的変更の緩和
- 周知計画
- 利用者対応
Acceptance Criteria(受け入れ基準)
-
funderを- 組織タイプとして扱うのか
- 独立した役割/属性として扱うのか
の決定と、その根拠の文書化
-
funder認定基準の定義と文書化
- 学術記録上の資金提供者としての記載をどう扱うか
- 研究組織スコープとの整合性をどう説明するか
-
キュレーション方針の更新
- 新方針に基づく運用ルール整備
-
Funder ID mappings に依存しない scoped “funders” view の提供
-
二重役割組織の扱いの明文化
- 主タイプを維持
- funder役割を発見可能に保つ
- 具体例を含めたガイダンス整備
-
移行・コミュニケーション計画
funderタイプに依存する利用者funderを意図的に低優先度扱いしている利用者の双方を考慮した案内
このIssueの重要性
この問題は、単なるラベル調整ではなく、RORの組織分類思想そのものに関わる設計課題です。特に重要なのは次の点です。
- RORの分類原則の一貫性
- 出版社・サービスが必要とする実務的フィルタリング
- 大学・政府機関・研究助成機関が混在する現実への対応
- Funder Registry廃止後の代替手段の整備
つまり、理論的整合性と実務上の使いやすさを両立するための基盤議論といえます。
まとめ:
RORにおける funder を「組織タイプ」として持たせ続けるべきか、それとも別の役割属性として再設計すべきかを検討し、Funder Registry廃止後も使える資金提供者ビューと運用方針を整備するためのエピックです。

