RORのAPIを活用するときの注意点
RORは、著作物のための機関の永続識別子だけではありません。ROR番号を入力することで、所属機関の住所等も取得することができます。本稿では、ROR APIを利用する際の注意点をまとめます。
日本におけるROR IDの割り当て状況
現在、日本ではNISTEPの研究機関辞書に準拠し、原則として1つの機関(親組織)に対して1つのROR IDのみが割り当てられています。なお、病院については機関とは異なるIDが割り当てられています。
ROR APIを通じて取得できる住所は、代表的なキャンパスや本部のものに限られます。そのため、「研究者の実際の詳細な勤務先(物理的なキャンパス)の住所」を特定・表示する目的でROR APIを利用した場合、ユーザーの実際の所在地と乖離が生じる可能性があります。
設計上の検討ポイント
住所表示機能を提供するかどうかは、システムの目的によって判断が異なります。以下の3つの観点を考慮することをお勧めします。
1. 組織の「同一性確認」が目的の場合 → 表示は有用
RORの主な目的は、テキストの表記揺れを防ぎ、研究機関の所属を正確に識別・名寄せすることです。「同名の別の大学ではないこと(例:米国の大学ではなく日本の大学であること)」をユーザーに確認してもらうために住所(都市・国など)を表示する場合、代表住所の表示は非常に有用です。
2. 厳密な「物理的所在地の特定」が目的の場合 → 注意が必要
郵送物の送付先や、特定のキャンパスごとの詳細なデータ分析を行う場合、代表住所のみを表示・登録させると実態と合わなくなることがあります。このようなケースでは、以下のいずれかの対応を検討してください。
- RORから取得した代表住所を表示したうえで、「キャンパス名」や「詳細な住所」をユーザーが手動で追記・修正できるようにする
- 詳細住所の自動入力機能自体を提供しない(誤解を防ぐため)
3. RORにおけるキャンパス(別拠点)の登録ポリシー
日本では「1大学1ROR」のケースが多いですが、RORのポリシー上、複数のキャンパスを持つ組織の扱いには柔軟性があります。
- RORは組織の階層構造(親・子・関連組織)をサポートしており、大規模な組織の「独立した別の所在地(Separate locations)」については、キャンパスごとに個別の「子(child)」ROR IDを割り当てることが可能です。
- ただし、大学内の「学部・カレッジ・スクール・部門(faculties, colleges, schools, departments)」といった内部組織は、原則としてRORの登録対象外(スコープ外)です。
地理的に離れた独立した拠点が、論文やデータセットの所属情報として頻繁に登場するようであれば、誰でもそのキャンパス用の子ROR IDの追加をリクエストすることができます。
子ROR IDを付与した場合の問題点
キャンパス(独立した別の所在地)ごとに個別の「子(child)」ROR IDを割り当てた場合、研究者がそのキャンパスを所属として論文を投稿すると、論文のメタデータには「子」のROR IDが紐付けられることになります。これにより、親組織単位での集計・分析に支障をきたす可能性がある点に注意が必要です。
- 子組織の特定: まず、ROR APIの高度なクエリパラメータを利用して、親のROR IDに紐づくすべての「子(child)」や「関連(related)」のROR IDリストを自動的に取得します。
- 複数IDでの横断検索: 取得した親組織のROR IDと複数の子組織のROR ID群(OR条件)を使って、CrossrefやDataCite、ORCID(これらはRORを推奨識別子として統合しています)などの学術インフラや論文データベースを検索します。


