海外留学された様々な方が、一番苦痛だったのが、授業中でなく、授業の合間、お茶を飲みながら、どうでも良い話をする時や、パブ等でのくだらないお話をする時だったというようなことをインターネットやブログなどで、記載されていることがあります。ウィットに飛んだトピックで、ちょっと笑いが挟まるような内容が好まれると思います。不特定多数の相手に対して、分かるように伝えることが、難しいと感じたのではないかと思います。もちろん本人の言語力が足りないというのもあると思いますが、やはり相手がいての話のため、覚えて来た内容を一方的に話すだけでなく、相手の顔色を見ながら、身振り手振りで、本当にわかっているか確認しながら、時には言葉を変えてお話する必要があり、その意味で、特に日常生活の普段のコミュニケーションが難しく感じるものかもしれません。
例えば英語の会話1つをとってみても、最終的には同じ意味になるような単語、文、会話がたくさんあり、場面場面で、一番伝わる文や単語を選択する必要があります。その選択により、不自然な内容になってしまったり、無礼な内容になってしまったり、丁寧すぎる内容になってしまったりします。
いくつか英語を利用して、サンプルを見てみましょう!
例:自己紹介
I am Taro Yamada.
My name is Taro Yamada.
例:描写
This is a pen.
This is something, a long, thin, object used for writing or drawing with ink.
例:同じ意味の単語(サッカーする準備ができています)
I am ready to play soccer.
I am prepared to play soccer.
例:文語体と口語体(携帯電話をもっていたら、あなたに電話したであろう)
If I had had my cell phone, I would have called you.
I dint call you because I didn’t have my cell phone.
例:言い換え
She works hard every day.(彼女は毎日一生懸命働いています。)
She is hard worker.(彼女は働き者だ)
She is diligent in her duties.(彼女は職務に真摯に取り組んでいる。)
例:各種の同じ意味の質問(そのフェスティバルはどこでやっていたかを質問する内容)
* Where was the that festival?
* Where did it take place?
* Where did that festival hold it?
* Where was the that festival held?
上記ように、日常のコミュニケーションについては同じ内容を伝える場合でも、様々な表現があります。それぞれの表現のボトムラインはなんでしょうか?最終的には相手に「伝わる」こととなります。その意味では相手に対して「意志疎通:コミュニケーション」することが目標となります。また、同様に、文部科学省の外国語科の目標によると、「外国語科の目標は,「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」を育成すること」としています。実際問題として、「コミュニケーション」という意味では、上記の通り、表現の方法は多数あり、どれも間違ってはいないことを考えると評価は非常に難しいものと言えると思います。
一方で、学校現場では、中間テスト、期末テスト、入試、学力テスト等含めて、学力を測定するために、解答が一つしかない穴埋め問題やあらかじめ選択肢があるような試験を提供しています。英検やTOEICなども同様で、短い時間で理解がされているか確認するためには仕方がないとはいえ、解答が一つのため、採点する方は何も考える必要なく大量に学力を測定できます。一般的には、パフォーマンス能力といいます。パフォーマンス能力の測定については、記憶やポイントを押さえる能力により、能力が向上するため、比較的短期間で、能力が向上するケースが多いのが特徴となります。
ただ、パフォーマンス能力が高くても、「意志疎通:コミュニケーション」の言語能力があるのかどうかはわからないケースが多数報告されています。企業で、TOEICで900点以上を取っている人を採用して、海外事業部を任せても、現地でのコミュニケーションが期待ほどできない等、様々な企業の人事担当者から聞こえてきます。いくら学習対象言語の熟語や難しい単語をより多く知っていたとしても、相手によっては、通じないケースもあり、「意思疎通:コミュニケーション」を行うためには、定型文の会話だけでなく、日常生活で相手に分かるようにするための総合的な対応が求められるからかと思います。
例えば、実社会で、日本のハンバーガーショップで、ご自身が店員で、外国人のお客様との注文のやりとりを想像してみてください。決められた用語以外のものや想像していた内容以外の質問が来た時でも、外国人特有のちょっとわかりにくい日本語が来た時でも、日本語を母国語とする人であれば、他の言葉で言い換えたり、相手に対してわかりやすい言葉でコミュニケーションができるものと思います。その意味では、実社会で、母国語では、知らず知らずのうちに、相手に合わせた適切なコミュニケーションができているものと思います。
この「意思疎通:コミュニケーション」能力の測定については評価者にとっては、評価がとても難しいものとなります。一般的には、言語運用能力(英語ではProficiency(〔能力・技能などの〕熟練、熟達、習熟(度))能力)と言います。評価する人は、どのレベルでコミュニケーションができるか、(単語、文節、文、段落、複段落)、どの程度の言語運用能力を対象にするか、何をもって特定の言語運用能力のカテゴリとするか、カテゴリーごとのCANDO Listも含めて明確な指針が必要となります。他にも、コミュニケーションという意味で、外国人に慣れた方のレベルで通じるか、外国人になれていない方のレベルで通じるか、オフィシャルな場面での会話でのコミュニケーション、身内での会話でのコミュニケーション等、さまざまな視点からの評価が必要となります。その測定については、上記の通り、言語運用能力の高い人から、低い人まで、様々な人がいて、一つのレベルでの評価が難しく、現在のところ、コンピュータでは測定ができません。そのためどうしても審査についての人的なコストが発生してしまいます。また同様に、この「意思疎通:コミュニケーション」の能力の測定については、一度に何万人もの大量の試験には向きません。さらに、この言語運用能力の向上については、定期的に話し続けることで能力がゆっくり上昇する傾向にあり、最低3ヶ月、6ヶ月といったスパンの時間が必要となります。
言語学習の効果測定については、学習確認のための短期間ごとのパフォーマンスの測定と長期間ごとのコミュニケーション能力(言語運用能力)を測定することで、より正確に学力とともに、言語学習の文部科学省の外国語教育の目的である、「意志疎通:コミュニケーション」能力測定ができるのではないかと思います。これを機会に是非、コミュニケーション能力が測定できる、US連邦政府でも採択している、ACTFL-LTIの言語運用能力試験、お試しください。言語の4技能(Speaking, Listening, Reading, Writing)の現在のコミュニケーション能力を測定できます。