最初に、なぜ人は言語を学ぶのかとう素朴な疑問があります。ここに記載されているように、言語自体は、コミュニケーションのための手段(ツール)であり、本来語り合うテーマがなければ真の意味でのコミュニケーションは成り立ちません。
その先に何があるかというと、その言語が用いられている国や地域の人と文化や背景や歴史を知ることになります。さらに、自国との比較を行うことで、自分の言葉や自分の文化、自国的な見方、考え方を学ぶことに繋がります。
また、最近の東京都の「英語スピーキングテスト」についての記事によると、スピーキングテストとフィギアスケートが共通した項目があることが述べられております。意味するところは、絶対の「正解」がなく、いく通りの表現が可能で、無限に存在する回答を、誰に対しても同じ基準で、ぶれなく、公平かつ正確に採点しなければならないことだそうです。受験者が多くなればなるほど、採点が難しくなってくるそうです。そのため、受験生が多くなればなるほど、発音や流暢な会話の方が、文法の正確さや単語の適切さより比重が高くなるのではないかという懸念があります。
同様に社会に出て第二外国語を利用するときには、実際に必要とする能力は、発音や流暢さではなく、内容と論理性に焦点が充てられ、ついで語彙や文法の適切な運用が重要な項目になります。
ここのではこのコミュニケーションを如何に測定するかという視点で、2つのテストを比較したいと思います。
ここで言うコミュニケーション能力とは、「対人的なやり取りにおいて、お互いの意思疎通をスムーズにするための能力のこと」です。
今回は、TOEICのスピーキングテストとACTFL-LTIのOPIcとの違いを確認したいと思います。
TOEICのSpeakingテストは、公式サイトで、さまざまな情報が掲載されており、皆さんご存じのものかと思います。
大凡20分間で英語の”話す”能力を確認するためのテストとなります。
測定する項目は公式サイトによると下記の項目だそうです。
・英語のネイティブスピーカーや英語に堪能なノンネイティブスピーカーに理解しやすい言葉で話すことができる
・日常生活において、また仕事上必要なやりとりをするために適切に言葉を選択し、使うことができる(例えば、指示を与えたり受けたり、情報や説明を求めたり与えたり、購入、挨拶、紹介ができる等)
・一般的な職場において、筋道の通った継続的なやりとりができる
問題は11問で、5つのパートに分かれます。
1.音読問題(準備時間各45秒/2問題各45秒)
2.写真描写問題(準備時間各45秒/2問題各30秒)
3.応答問題(準備時間0秒/3問題15秒又は30秒)
4.提示された情報に基づく応答問題(準備時間45秒/3問題 各15秒又は30秒)
5.意見を述べる問題(準備時間45秒/1問題 60秒)
公式サイトによると、スコアは10点刻みの200点満点で、スピーキングのスコアレンジは1から8段階で、発音、イントネーションとアクセントもそれぞれ3段階に分けられます。
備考:
基本的にはすべての受験生は試験日に共通の問題が出題される。
対策のための書籍等があり、パフォーマンステストに分類される。
コンピュータテストで、回答が録音され、音声をチェック評価される。
一方のOPIcについては、どうでしょうか?OPIcはOral Proficiency Interview-Computerの略で英語だけでなく他の言語(合計15カ国語)も含めたOral Proficiency Interview-Computer(コンピュータを利用した言語運用能力)を測定するテストとなります。
このテストでは言語運用能力(コミュニケーション能力)を測定します。
テストの詳細については、試験紹介や受験者ガイドに詳細に記載があります。
大凡20分から40分程度のインターネット経由でのアバターとの会話のテストです。
測定項目は以下の通りです。
会話全体を通して、対話を通じて、言語運用能力(日常生活の中で、質問を確認して、適切な用語で、適切な解答をしているか)を確認し、レベル毎の評価を行う。
問題は以下の通りで、すべて対話を通じたコミュニケーション内での言語運用能力の測定を行います。
1.最初にレベル設定として、5段階のフォームから自分の語学力に適切なフォームを選択し、質問の難易度を決定します。
2.語り合うテーマを設定するために、Background Surveyを行います。質問は事前に行うBackground Surveyの内容について出題がなされます。
3.大凡12問から17問がアバターを介して出題されます。その中には、特定の状況での言語運用能力を測定するためのロールプレーが必ず1問以上出題されます。
ACTFLのOPIcでは測定は、アクセントやイントネーション、発音についての個別の判定はございません。
言語運用能力のみを測定項目として、Novice LowからSuperiorまでの10段階のレーティングとなります。
測定項目は、以下の通りです。
初級では、自分に直接関係する日常的な話題について、短い文章、単語でのコミュニケーションからはじまり、非母語話者の発話に慣れている行為的な話し相手にも理解してもらうのに困難を伴うことがある。
中級レベルでは、主に、日常生活に関連した身近な話題について、単文や連文での談話が可能で、自分の考えや伝えたいことがらについて、試験対象言語を利用して、非母語学習者の応対に慣れた話し相手に理解してもらうことができる。
上級レベルでは、地域や国、国際レベルの話題について情報を伝達し、積極的な姿勢で会話に参加できるレベルで、現在、過去、未来の時制を活用して、段落レベルでの情報伝達が可能としています。また、非母語話者の発話に不慣れなものを含む母語話者に理解される十分な文法構造と語彙を習得している。
超級レベルでは、フォーマル・インフォーマルな状況において、具体的、抽象的のいずれの観点からもさまざまな話題についての会話に参加することができ、時制はもちろんのこと、裏付けや主要論点を区別して、複段落で詳細に説明することができる。たとえ、微少な間違いがあったとしても、それにより母語話者の話し相手が混乱したり、コミュにケーションに支障をきたしたりすることがない。
上記は、US政府の経験により、コミュニケーションという観点において、母語話者の視点からのACTFLが策定したガイドラインに基づいた、有資格者が評価を行い、そのほかのCan Do Listともに、厳格な分類を行なっています。
備考:
試験は、受験者の質問に対しての正確な情報を測るのではなく、受験者のコミュニケーションの能力が測定されます。
出題問題は、受験者が選択するフォームやバックグランドサーベイによりそれぞれの受験者で異なります。
対象言語は15ヶ国語となります。
基本的な流れとしては、ウォームアップ、レベルチェック、突き上げ(2段階以上の突き上げはない)、ロールプレイ、終結部という形で測定されます。
コンピュータテストで、回答が録音され、ACTFLの資格を有するレイターが採点を行います。
プロフィシエンシー(言語運用能力)テストに分類され、パフォーマンステストではないため、短期の向上が難しく、如何に頻繁に会話練習を行うかということが最も重要な要素となります。
通常の日常会話同様に、最後まで質問を確認してから、話し始めることが重要となります。
NCSSFL-ACTFLのCanDoListでは、評価項目として、コミュニュケーションの中でのInterpretive(解釈能力)、Interpersonal(対人能力)、Presentational(提示能力)以外にも、異文化コミュニケーションとして、Investigate(調査能力)やInteract(交流能力)などがCando項目に加わってCando項目として評価の対象になっています。
現在試験を提供するLTI社のYoutubeチャンネルで情報を継続的に提供しておりますので、ご確認ください。
上記の通り、今回は、2つのテストを比較してみました。
それぞれ違いはありますが、発音、イントネーション、軽い会話のTOEIC、母語話者の視点から、試験対象言語のコミュニケーション能力を測定するOPIc、さまざまな違いがあり、それぞれに長所や短所があります。
テストも多様性が重要で、測定したい項目に応じて様々な言語テストを選択することが望ましいと考えています。